生演奏への期待と価値

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ここ最近、意図せずライブや演奏会に連続で参加させていただいており、非常に優秀な音楽消費者をしています。

それぞれの演奏(といっても一個はシンポジウムだが)の感想を書こうとも思っていたのだが、それよりも「生演奏で聞けて嬉しかった」「生で聴いたのにガッカリだった」という現象に出くわして、何故両極端なことを思ったのだろうと考えていたので、ここに少し書いてみようと思います。

生演奏で聞けて嬉しかったライブ達

最近、2つのライブに出会いました。一つ目は、クロノトリガー/クロスなどの作曲でお馴染みの光田康典氏のシンポジウムが9/13に行われました。(詳細なレポートはこちらのiNSIDEの記事が詳しいので是非お読みください。)

そこでは、SUPER JOHN BROTHERSと呼ばれる尺八の神永大輔氏を中心とした、ヴァイオリン、ベース、ドラム、キーボードという異色の編成のバンドのライブ演奏が披露されました。特に、神永氏はクロノクロスの「時の傷痕」を聴いて光田氏の曲に惚れ込み、そのメロディから尺八を始めることを志されたそうです。(実際に原曲も尺八だったとは後から気づいたそうです)

神永氏もそうですが、ベースの岩田氏も光田氏の大ファンとのことで、演奏者が大興奮しておりました(笑)確かに、作曲者の前で演奏する機会って中々ないですもんね。
シンポジウム自体無料で開催されたのですが、とても愛のある演奏で幸せな空間でした。特に自分の好きな時の傷痕が聴けたのはとても良いアレンジで鳥肌物でした。小さなスタジオが一体になったのを思い出します。

もう一つ、素敵なライブを聴いてきました。
フィンランドの伝統的な楽器カンテレを、モダンに演奏するIda Elinaさんのライブでした。
Unelmien Keikkaという素敵な曲を紹介します。

そもそも、カンテレという楽器を知ったのが3日前だったのですが、ふらっと行ってきました。(YouTubeを見て良さそうだなとは思っていました)彼女は札幌に留学生として音楽を学びに3年前日本に来たそうで、そこで出会った方々や体験を通じて演奏活動を続けることを決意されたんだとか。

彼女の演奏する曲は、明るくきらびやかな和音を中心に使っており、とても聴いていて元気になります。(こんなことを言っては失礼かもしれませんが、フィンランドの音楽って割と重々しい曲が多いイメージなんですよね。好きなんですけど)たとえば、Good Newsという曲なんかがそういうイメージになります。

ライブのお値段も良心的で軽食という名の軽いビュッフェ付きで2000円でしたので、お釣りが帰ってくるんじゃないかという勢いでした。特に、「さくら」や「あかとんぼ」のカンテレアレンジを織り交ぜた、日本人への配慮がとても嬉しく、小さな箱でしたが純粋に楽しめました。

期待していたPress Start 2012

Press Start 2012は、FFの植松伸夫氏やスマブラの桜井政博氏、指揮者の竹本泰蔵氏らが企画をしている「ゲーム音楽の紅白」(桜井氏談)です。過去に2回ほど聴きに行ったのですが、特に2010年の公演が素晴らしく鮮明に記憶に残っています。
今年はSkyrimのOpening Themeやゼルダの伝説 スカイウォードソードの曲を演奏するなど期待をしていました。Skyrimの曲はPeter Hollensというドヤ顔で有名(あかぺら村の村長談)な多重録音アカペラーとヴァイオリンのLindsey Stirlingとの演奏が格好いいです。1人の声と1本のヴァイオリンで、、、というくだりにはつっこまずにいられませんが。

東京フィルの安定した演奏で、竹本泰蔵氏の熱い指揮による素晴らしい演奏がBunkamuraオーチャードホールにて行われました。
ですが、大好きなSkyrimを聴いてズコーッとなってしまいました。

Press Startというのは席の当たり外れがものすごく大きいんですね。Bunkamuraオーチャードホールには初めて行ったのですが、2階席のサイドバルコニーではない端っこの席になりました。で、2009年の「エースコンバット・ゼロ ザ・ベルカン・ウォーのギターが全く聞こえなかった」という記憶が蘇りました。

悪い予感はやはりあたりました。PAさんはおそらく1階席の中央後ろに居たためでしょう、2階席の端っこでは音のバランスがよろしくありません。弦の音が団子になって左のスピーカーからのみ聞こえてくる。しかも、高音のみが飛んでくる位置だったため、刺さる刺さる。 「何故、コンサートホールへ来て、スピーカーの定位を気にしたり特性を気にしなけりゃならないんだ」 というのが率直な感想です。基本的にスピーカー越しに音を聞かせるようなバランスだったため、せっかくの繊細なオケの楽しさが台無しでした。倍音もほとんど感じられないし。

後、どうしてオケ判の合唱って適当なんだろうと思うくらい、合唱が残念でした。10人ほどの編成でマイクを使ってフルオケに対して演奏というのが無謀だと思うのです。しかも、マイクに乗らない発声だったのか、Skyrimの迫力もアンプで増幅しました感が……。
リトルジャックオーケストラとChor Crystal Manaの演奏はアンプラグドだったこともあるでしょうが、非常によいバランスで感銘を受けたのです。だからこそ、ゲーム音楽のオフィシャルの集大成であるPress Startには期待していましたが、裏切られてしまいました。(しかしながら、東混のSymphonic Fantasiesは別格でしたね)

PAって凄い大事ですね。(オーケストラの演奏会にPAがいるかはよく分かりませんが)ちなみに、ソロの歌物は良く聞こえましたよ。

何が違ったのか?

漠然とではありますが、箱の大きさに比例してチケット料金と期待が大きくなってしまうのだろうなー、と思っています。

集客力のある大きな箱では、それに見合った企画やゲストと、それに見合ったお値段が設定されます。それ自体は自然な事だと思うのですが、エンターテイメントとしてのライブが目指す方向が音楽以外の所に軸足を置いてしまったら、少なくとも自分が求めるライブではないのだろうと思います。

後、お値段に見合ったトータルなクオリティを無意識のうちに求めてしまうのでしょう。
プロのケーキ職人と素人の違いは、作る側の状況によらず安定した味を保てること、と聞きます。指揮者が良ければいい、編曲者が良ければいい、オケが良ければいい、それでもまだ足りない時があるんだなと思い知らされました。

つまり、Press Startはプレオーダーでチケット買えないと地雷踏む可能性があって、怖くていけないということですね。。。

後は、Ida Elinaさんは少し違うかもしれませんが、ゲーム音楽にとっては演奏者の曲に対する愛も大きいと思います。そこは、プロオケだとどうしても薄れてしまいがちですしね……。

個人的には、Press Startという企画自体は大好きだし、ゲーム音楽を引っ張っていただきたいと思っているのです。ゲーム業界が少し元気がない状況ですが、ゲーム音楽がもっともっと広がってくれると嬉しいと思います。
自分にできることは何もないのかなぁ。

Aki Ariga
Aki Ariga
Principal Software Engineer

Interested in Machine Learning, ML Ops, and Data driven business. If you like my blog post, I’m glad if you can buy me a tea 😉

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