親も読みたい子供とネットの向き合い方を考える二冊

“Two young girls stand reading from a book outdoors in the sun” by Ben White on Unsplash

伊藤淳一さんの以下の記事を読んで、子供にネットの話をどう教えるのがいいのかなぁと悩んでいたので、件の記事で紹介されていた本と、そこから派生して仲間内で紹介してもらった本を読んだので紹介したいと思います。

伊藤さんの記事も長いですが、ソフトウェアに携わるエンジニアでかつ子を持つ親として考えさせられる内容でしたので、時間があれば読んでみると良いと思います。

11歳からの正しく怖がるインターネット: 大人もネットで失敗しなくなる本

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こちらは、伊藤さんの記事でも紹介されていたGREEの小木曽さんの本です。恐らく、「渋谷の交差点の真ん中で高校生がプラカードを掲げた写真」の話をしてる人というとピンと来る方も多いかと思います。SNSに投稿する事は、渋谷の交差点でその投稿を掲げることと同じ事だよ、という話や魚拓やスクショなどの話と共に、ウェブに上がった情報は消せないし残り続けるよ、という話を分かりやすく説明しています。

この本の特筆すべきところは、アイスクリームの冷凍庫に入った写真をあげてしまう事件など、いわゆる炎上した事件を各種紹介してくれているところが非常に良いところです。ある事例では、炎上した学生がその後就活でも結婚でも「炎上させた人」として拒否され続けているという、重荷を背負って生きている話も挙げられていました。

また、炎上したら言い訳をせず、まずきちんと謝罪をしましょうのようにどのように振舞うべきかという話や、子供の間でのSNSの特徴的な使い方やトラブルなど、多くの人と話しており経験も豊富な著者だからこその話が多く、ソフトウェアエンジニアの目線からも正しい情報が提供されていて安心感を感じました。ネットと向き合うためにはリスクとベネフィットとのトレードオフであるという事を何度も書かれていて非常に好感が持てます。

一方でいくつか気になる点もありました。本書の位置付けからはある意味仕方のない話ですが、全編を通してマイクロソフトのエヴァンジェリストの西脇さんがいうところの「ホラーストーリー」で終始しているように見受けられるところです。これは、想定読者が小学校高学年・中高生もターゲットにしているためだと思うのですが、どうすれば(意識の高い人ではない)普通の人の興味をひき続けられるのかという点を意識して、ユーモアに混じった円やかな口調ではありますがホラーストーリーを積み重ねています。仕方のないこととはいえ、救いがない話も多く少し胸焼けしてしまうかもしれません。

もう一つの問題は、子供の興味を引こうとするあまり、「変態」という語を乱用しているように見受けられることです。特に、肖像権の説明の際に「私が女子高生の格好をしていて街中を歩いていたら、変態ですよね(だから、不利益が生じうる写真や動画のアップロードはリスクがありますよ)」というような表現があり、妻とも「(2016年出版だけど)この表現は2018年には厳しいかもね。女装がしたいけど悩んでる高校生には辛い」という話をしていました。

この辺りの話は、自分も西脇さんのセミナーに参加したり本を読んだりして、どのように人に受け入れやすいプレゼンをするかという事を常々考えていたので、ともすると集中力や興味に欠ける子供を対象にどうしたら聞いてもらえるか、頭に残るかという事を考えた上での「北風と太陽」の選び方なんだとは思います。西脇さんも言っていましたが、北風を使うときは不必要に傷つける人を作らないようにしないとなと再確認しました。

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細かいことを書きましたが、親がこの本を読んで知識を得る分には得られるものも大きいですし、後述する「ネットのルール」と合わせてぜひ一度読むのをおすすめします。

学校では教えてくれない大切なこと 12 ネットのルール

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この本は、小学校低学年からでも読める漫画を中心としたネットとの向き合い方になります。全般的にギャグ漫画のノリで、主人公の少年とその父親(たまに母親)が失敗していくのをネットに詳しい祖父がガイドしていくという流れです。IDパスワードの命名や管理やアイドルからのメール詐欺に引っかからないなど、小木曽さんの本よりは幅広いテーマについて扱われています。

この本の良いところは、シリーズ通して比較的低年齢の子供でも自分で読んで理解できるところにあります。さすが漫画。無料とうたうアプリをダウンロードする時は正規ストアか気をつけてねとか、著作権の話と違法ダウンロードの話も含まれており、書いてある内容も、やや安全側に倒しているきらいはありますが、ソフトウェア関係の人間としてみても間違っていないと思います。

ただ、炎上したときは何も返信等しないでおきましょうというような小木曽さんの本との対応ポリシーの違いや、困ったら親に相談しようという、子供向けの本としては正しいが親としてどうするかを判断する必要があるので、小木曽さんの本と合わせて読む事で、家族で考えておくのが良いでしょう。

ここからは蛇足ですが、冒頭の伊藤さんの問題提起の話を読んで感じたのは、小学校の招聘する講演は、先生が判断できる材料がなかったり、対象となるものに対する知識が足りなかったりするなどで、問題のある講演者を呼ぶリスクは潜んでいます。自分の子供も、犬や猫の殺処分の場所や方法を明示する動物愛護団体の講演を保護者参観の日に見せられて頭を抱えた覚えがあります。結局、これは構造上避けられないものである事を認識した上で、各家庭で正しい知識を教え自衛するしかないのかなと思います。

ご家庭での子どもとネットに対する考える良い材料になれば。

Aki Ariga
Aki Ariga
Principal Software Engineer

Interested in Machine Learning, ML Ops, and Data driven business. If you like my blog post, I’m glad if you can buy me a tea 😉

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